2013年3月26日火曜日

「カジノ王VS. 朝日新聞」の行方が日本経済に影響するってホント?



 世の中的にはあまり話題になっていないが、実は今、日本経済を左右する死闘が繰り広げられているのをご存じだろうか。

 それは、パチスロ界の雄「ユニバーサルエンターテインメント」(以下UE社)と「朝日新聞」のガチンコバトルである。

 覚えている人も多いと思うが、3月14日の「朝日新聞」一面にこんな見出しがバーンと出た。

 「石原宏高議員側が運動員要請 UE社派遣、法抵触の疑い」

 ご存じ、石原家の三男・宏高氏が先の衆院選がUEの社員3名に選挙運動をさせていたのではないか、というのである。実はこの“ネタ”は昨年の選挙期間から一部記者の間ではささやかれており、私もこの時事日想で「石原慎太郎が公約に「カジノ」を入れないのは、なぜ?」(12月4日)というタイトルで宏高氏とUE社の関係についてふれた際、いくつかのメディアから問い合わせがあった。各社既に取材を進めていたわけだ。

 そんなわりとよく知られたネタがなぜ3カ月経過したこのタイミングでスッパ抜かれた形となったのか。その謎を読み解くカギは、昨年末からのUE社と「朝日」の因縁にある。


カジノが与える日本経済への影響

 事の発端は昨年11月中旬、ロイターをはじめとする一部経済メディアが、UE社が計画をすすめているフィリピンのカジノリゾートの認可をめぐって、フィリピンカジノ公社に近い人物に3000万ドルの不正な資金を送ったのではないか、という疑惑報道である。

 当然、UE社は真っ向から否定。ロイターに対して2億円(全体の請求金額192億円の一部)というダイナミックな名誉毀損訴訟を提起したのだが、ここに颯爽と「参戦」をしたのが「朝日新聞」である

 年の瀬も差し迫った12月30日、31日とロイターを援護射撃するような記事を2日にわたって掲載。さらに年が明けた2月8日には「取締役会決議書」なる社内文書を入手し、不正といわれている資金の送金について、岡田和生会長ら取締役が指示した署名がある、と報じた。

 もちろん、UE社が黙っているわけがない。そんな名前の文書はハナから存在しないと即日否定し、「朝日新聞」の取材を「組織的な反社会的活動」と猛抗議。そんな息詰まる攻防のなかで、次の一手として「朝日新聞」側が切った“カード”が「石原宏高氏」である。

 この連載でも述べたが、宏高氏はフィリピン政府関係者と強いコネクションがある(関連記事)。そんな人物とUE社に「黒い交際」があると世間に印象づければ、カジノ疑惑もグンと信ぴょう性を増す。要するに、外堀から攻めていこうというわけだ。

 両者が激しい争いをしているのはよく分かったが、「日本経済を左右」は言い過ぎだろ。そんな声が聞こえてきそうだが、これがあながち大げさな話でもない。

 実は「カジノ」というのはかなり手っ取り早く景気回復ができる。ウオーターフロントやらリゾートが大規模再開発ができるのでゼネコンは潤う。外国人がわんさかと訪れるので観光業も活性化し、雇用も創出される。というのは別に私の持論ではなく、いろいろな自治体やらがそう言っている。

 例えば、沖縄県の場合、カジノリゾートの建設だけでも3200億円で直接雇用1万3000人を見込み、年間収入(カジノ運営以外も含む)は2100億円。県全体への経済波及効果は約8974億円、約7万7000人の雇用が創出できるはずだ、とソロバンをはじく。事実、2010年にカジノをはじめたシンガポールでも観光客が急増している。ギャンブルという問題点はあるものの、実は「バラまきだけじゃなく成長戦略を」という声に応えるうってつけの策だったりする。橋下徹氏や石原慎太郎氏、そして息子の宏高氏がカジノを推進するのは、そういう理由だ。

 だが、この「カジノ構想」には重大な欠陥がある。ホテルや開発はいいとして、産業の“核”であるカジノオペーレーションができる日本企業がないということだ。小難しい話は省くが、カジノは全世界的に厳しい規制があって、なんの実績もない業者になどライセンスは与えられない。

 だからもし日本でカジノリゾートを造るとなると、「カジノ王」と呼ばれているマカオのスタンレー・ホーやラスベガスのスティーブ・ウィンを招かねばならない。そういうキモの部分を外国人に握られたら、日本人の旨味は減る。

 そこに目をつけたのが岡田会長だ。いち早く米国に進出し、スロット製造業者として米カジノライセンスをとり、スティーブ・ウィンが資金難で苦しんでいるときに手を差し伸べて「盟友」となった。すべては日本でカジノが解禁された時に主導権を握るための先行投資だったのだ。

 そんなパイオニアが「朝日新聞」らが主張するように、「不正」をしていたとなると、「カジノ」のイメージは地に落ちる。先の選挙で石原慎太郎氏が公約から「カジノ」を引っ込めたように、多くの政治家が「カジノ推進」の看板を下ろす。「カジノで景気回復」は実現からグーンと遠ざかる。

 先週、UE社は「朝日新聞」を提訴した。法廷へと舞台を移した両者のデスマッチから目が離せない。

【2013年03月26日 08時01分 IT media ビジネスから抜粋】