2015年1月29日木曜日

海外事例にみるカジノ開業までの現実的タイムライン!!



シンガポールは2005年の4月の閣議決定でカジノ合法化方針を決定し、2010年に統合型リゾートの開業にまで至りました。その間は約5年であり、現在2015年の我が国で2020年までに統合型リゾートを実現するとなると、丁度同程度の時間が残されていることとなります。

但し、だからといってシンガポールが出来たことを我が国でも出来るかというと、ハッキリ言って不可能です。以下では、シンガポールで統合型リゾートの開業まで至ったタイムラインを纏めてみました。

シンガポールがたったの5年で統合型リゾートの導入を実現できたのにはいくつかのポイントがあります。

1. シンガポールの入札プロセスは、実は2004年の12月からスタート
シンガポール政府がカジノ合法化方針を確定したのは2005年4月ですが、実はシンガポール政府はその決断が行われる前、2004年12月に「事業構想公募(RFC: Request for Concept)」を実施することで実質的に入札プロセスをスタートさせています。事業構想公募とは、カジノ合法化が実現するとは確約のない中で、各事業者に対してシンガポールへの投資の意向があるかどうか、あるとすればどのような開発をイメージしているかなどの事業構想を問いかけるものです。

これは、その後の開発提案公募(RFP: Request for Proposal)とは分離して行われるものであり、事業者もその時点での回答に何らかのコミットメントを行う必要はないものでした。しかし、シンガポール政府はこの事業構想公募を、その後に行われる開発提案公募の「申し込みを兼ねるもの」として位置づけ、事業構想公募に回答した企業のみが、その後の本入札に加われるものとしました。また、この申し込み段階ですでに企業の背面調査を実施しており、次なる本入札の入札指名企業もここですでに選定しています。

2. カジノ管理法の成立より前に入札開始
シンガポール政府がカジノ合法化方針を閣議決定したのは2005年4月ですが、その後、カジノ管理法案を想起し、それが国会で成立したのは翌年の2006年2月のことです。法による統治を行う現代法治国家では、当然ながらたとえ内閣がカジノ合法化方針を定めたとしても、それを実現するための「法律」が成立しなければカジノ合法化したとは言えません。なので、通常の国ならばこの法案の成立を待ってから、実際の入札プロセスが始まるものです。

しかし、シンガポールにおける統合型リゾートの導入事例では、政府は2006年の法の成立を待たずして、2005年11月にカジノライセンスの入札となる開発提案公募を前倒しで実施しています。これはシンガポールが、人民行動党による圧倒な一党優位体制にあることを前提とした、超法規的な措置であり、通常の他党体制の国では実現不可能なタイムラインの短縮手法であるといえましょう。

3. 実は2010年4月は暫定オープン
シンガポールのマリーナベイサンズは、「2010年4月に開業した」として知られているわけですが、実はかの施設の2010年4月のオープンはあくまで暫定オープンであり、フルオープンはその約1年後の2011年2月です。なので、シンガポールがカジノ合法化方針の決定から、およそ5年で統合型リゾートの開業に至ったというのもそこには若干の誤解があって、本当は開業するまでに6年の年月を経ています。

統合型リゾートの段階的開業の考え方に関しては、先日別にエントリを書いていますので、そちらをご覧ください。

4. シンガポールの建築基準は非常に緩い
とはいえ、マリーナベイサンズは暫定オープンまでおよそ3年という短期工事で仕上げられたわけですが、そこにはシンガポールの地政学上の特性の「助け」も存在します。シンガポールは地震も台風もないという建築上は非常に恵まれた立地にありまして、その結果、建築基準も非常に緩く、あのような短期での大型開発が可能であったといえます。

日本のゼネコンさんに言わせれば、「シンガポールの開発は、テーブルの上にマッチ箱を置いただけのようなもの」とのこと。逆に我が国の建築では、高層開発は上に高くする分だけ、地下に向かって深く基礎工事をする必要があり、非常に手間がかかります。もっとも、そもそもマリーナベイサンズの3つのビルを屋上で繋ぐというデザイン発想そのものが日本の建築では考えられないものであり、開業前の開発の途にあった施設を視察に行った時など、日本のゼネコン社員さんなどは、あの建築をみて「日本だと地震が起こって一発で瓦解する…」と、震え上がっておりました。

シンガポールの「合法化決断から5年で開業」というウルトラCは、上記のような様々な条件の下で実現したものです。では、そのようなシンガポールの開業タイムラインを、我が国において実現できるか?と問われれば、当然ながら「そりゃ、無理だろ」と即答せざるを得ません。一部カジノ推進派の主張する、「2020年、東京オリンピックまでに我が国での統合型リゾート導入を目指すべき」という主張がどれ程、現実味のないものなのかは、これら海外の事例を見れば一目瞭然というわけです。

【2015年01月29日 15時05分  BLOGOSから抜粋】

2015年1月12日月曜日

IR研究は「西高東低」



米国の有力研究者を招いたIR(統合型リゾート)セミナーが26日、東京で開かれる。主催は大阪商業大学アミューズメント産業研究所(大阪府東大阪市)。IRはカジノを中心に、ホテルやレストラン街、国際会議場、ショッピングモールなどを含んだ複合型観光施設を示す。経済活動や文化創造などで東京一極集中に歯止めがかからないものの、成長性が期待されるIR研究は大阪が拠点、「西高東低」だ。

大阪商業大学がIR研究の拠点
 このセミナーは「カジノ・デベロップメント&マネジメント講座」。大商大アミューズメント産業研究所が年に1回ペースで開催し、4回目を迎えた今年のテーマは「日本版カジノ―そのあるべき姿―」。次期通常国会でのIR法案の行方に注目が集まる中、タイムリーなセミナーとなりそうだ。

 セミナーにモデレータ(司会進行)として参加する藤本光太郎同研究所研究員(地域政策学博士)が、次のように話す。

 「IRに関する海外の研究者や専門家を招へいし、IRの先進事例を学び課題を討議するのが、セミナーの特色だ。日本ではIR研究はいまだ輸入学問の要素が強く、日本語で書かれた文献も少ない。そんな中、谷岡一郎大商大学長が、1980年代からカジノ研究に取り組んできた実績は、内外で高く評価されている。谷岡学長率いる大商大がIR研究の拠点となっており、IR研究は『西高東低』といってよい」

IR開業で1万5千人の雇用創出
 セミナーでは米国の専門家2名が講演。元ネバダ州立ラスベガス校教授で、カジノ法研究の第一人者であるアンソニー・カボット弁護士が、諸外国におけるカジノ法の歴史や現状を解説する。

 続いて、アラン・フェルドマン全米賭博依存症問題協議会会長が、米国での賭博依存症問題への対処法を報告する。ふたりの講演のあと、それぞれ日本の専門家が合流してパネルディスカッションを開き、日本版カジノの理想モデルをさまざまな角度から探る。

 産業界からは地域振興や雇用創出の観点から、IRへの関心が高まっている。

 「IRがオープンすると、ひとつの都市が生まれると考えてもらえればいい。客室5000室のホテルを中心とするIRでは、1万5千人の雇用が新たに創出される。職種もパートタイマーを含めると800種類におよび、幅広い人材が能力に応じて働ける。レストラン街では、さまざまなジャンルの飲食店が100店舗ほど必要になるし、5000室の客室の彩る生花を、毎日調達できる仕組みを工夫しなければならない」(藤本研究員)

 従来の工場誘致などと異なり、IRの誘致効果は業種を越えて地域全体に広がりそうだ。

世界最高品質のエンターテイメントを
 外国人観光客、とりわけVIPクラスの支持を集めたいIRは、観光産業の固定観念を一新させるインパクトを持つ。「講演や調査で地方を訪問すると、地元の有識者から、温泉と料理、もてなしの精神がわがまちの自慢という声をよく聞きますが、地域差がなくなり、温泉などの定番3点セットでは、もはや差別化がむずかしい。これからは地元独自の資源を活用しつつ、世界のIRと競い合いながら進歩をめざしていく時代を迎える」(藤本研究員)

 ローカルとグローバルというふたつの視点の融合が、IRに欠かせない。

 「世界でも最高品質のエンターテイメントを提供しなければ生き残れない分だけ、やりがいが十分。IRの先進地である米国では、エンターテイメントにかかわる人たちは誇りをもって働いており、これから日本もその方向へ向かうだろう。エンターテイメントは潜在的な成長性が高い。IRは独創的な発想で動ける企業や人材が活躍できる分野だ」(藤本研究員)

【2015年1月12日(月)11時58分配信 THE PAGEから抜粋】